シードルを楽しむ

フランス北部で造られる、リンゴを発酵させた微発泡の果実酒のことをシードルと呼ぶ。
アルコール度数はワインより低く、甘いのから辛口までさまざま。
イギリスだと英語読みでサイダーとなり、スペインではシドラとなる。
サイダーやシドラは基本辛口だ。
今回はまとめてシードルと呼ばせてもらう。

安全な飲料水の確保が難しかったヨーロッパでは、
アルコール度数の低いシードルは半ば水がわりに飲まれていた頃もあるらしい。
このへんはワインやビールとも似ている。
向こうのスーパーなんかに行くと、ワインやビールのあまりの安さに驚いてしまうけど、
シードルも同じように安価に手に入る。
輸入ワインと一緒で、日本に入ってくると3倍くらいの値段になってしまう。
なので本場欧州産のシードルはなんとなく手を出しづらい。


日本でもシードルを造っているところがいくつかある。
国産でぼくが好きなのはこれ。

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ぼくの田舎・盛岡のビール会社であるベアレンが、県産のリンゴ100%で使ったドライサイダー。
英国式にサイダーと読ませていて、以前はイングリッシュサイダーというネーミングだった。

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ボトルの底に澱(おり)が沈殿している。
ボトルの半分くらいをそのままグラスに注いで、まずはそのまま飲む。
残ったボトルを少し揺らしてあげれば、澱が液体に混ざっていって濁りを増す。
これがまた風味が増して旨い。

ただ、リンゴの収穫できる秋冬にしか仕込まないので数が少なく、ちょっと手に入りにくい。
そしてまあまあいいお値段がしちゃうので、たまの贅沢的なタイミングでしか開けられない。
でも間違いなく旨い。岩手のリンゴ使ってるし、飲まない理由はない。


こちらはメルシャンで出しているシードル。

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こいつの魅力はなんと言ってもその値段。スーパーで600円くらいで買えちゃうのだ。
外国産のリンゴジュースを使ってるとか後から炭酸加えてるとか、製法には目をつぶろう。
安いは正義だ。
フランスだと、カフェオレボウルみたいな小さな陶器の器に注いで飲むことが多いらしいが、
そんなもの持っていないので小さなグラスに。こうすると少しスペインっぽい笑

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ちなみにスペインだと、頭上まで高々と上げたボトルから空気を含ませながらグラスに注ぐ
エスカンシアというやり方があって、前に自分の店で練習したこともあるのだけど、
これは間違いなく床がビシャビシャになるので家では決してやらない。あたりまえだ。

炭酸がプチプチっと弾けてリンゴの香りが広がっていく。旨い。
ただこれちょっと甘いんだよなあ・・・・・・。
一杯二杯はいいのだが、次第に甘さが気になってくる。
そしてアルコール度数が低いから、なかなか酔わない・酔えない。
なので手っ取り早く酔っちまいたい、そんな時はブーストをかける。
ウォッカか安焼酎を足して、さらにソーダでちょっと割る。
酒精強化、かつドライ化。炭酸のシュワシュワ感もアップして喉越しさわやか。

ちなみにメルシャンの親会社であるキリンは「ハードシードル」という商品を出していて、
これもかなり旨い。ぼくの行動範囲だと、たしか肉のハナマサに売っていた。
もう何年も前にキリンシティで樽生のハードシードルを出していたこともあったのだが、それも一瞬で終わってしまった。
あれはとっても旨かった。キリンさん、あれまたやってほしいです。


アップルタイザー、これはリンゴのスパークリングジュース。
ノンアルコールです。

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気の利いた酒屋さんとかカルディみたいな輸入食料品店でも置いてる。
リンゴ100%のジュースなので風味抜群、なおかつスパークリングというのは国産ではあまり見ない。
個人的にはズブロッカをこれで割って飲むのが好きなのだが、
今回はシードル風にアレンジしてみた。
と言っても上の酒精強化と同じように焼酎足してソーダで割っただけ。
グラスはパブとかで使われているハーフパイント・グラス。

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さすがにリンゴの風味は落ちるけど、それでも全然イケる。甘くないからぐいぐいイケる。
そして割合によってはほどほどに酔う。。



シードルに合わせるつまみはなんだろう。
酒とつまみの相性は、まずはその土地のもの同士を合わせるのが基本。
シードルの故郷ノルマンディーとかブルターニュだと、カマンベールとかそば粉のガレット、
イギリスだったらフィッシュアンドチップス?スペイン、バスクの生ハムかな。
その手のものをおうちで用意できるんならそれでいいと思う。
でも辛口のシードル、もしくはぼくが作ってるよなシードルもどきは、辛口ゆえに料理の邪魔をしないので、
ビールや白ワインの感覚で色んなつまみに合わせられると思う。

この日のぼくはシャウエッセンと冷凍ポテトフライでした笑

バー、そしてバーテンダーについて

新型コロナウイルスが世界を襲うなか、仕事がすべて流れて自宅待機になってしまった。

時間だけを持て余して、でも夜になれば日課のように酒を飲む毎日。

これじゃイカン、何かを始めてみようかなと思い、

いまさらではあるけれどブログを始めることにした。

 

飲んだり食べたりしたもの、そして日々のよしなしごとをつらつらと書いていきたい。


今日はバーについて、書こうと思う。



「バー」と聞いて、どういうお店を想像するだろうか。

カウンターの向こう側の棚に、見たこともないような酒をずらーっと並べた渋い店。

ダーツバーやカラオケバーのように、酒以外の何かでお客さんが楽しむ店。

ガールズバーなんてのもある。風営法のからみでお店の女の子が隣に座ることはないけれど、

あくまでも女の子ありきの店だろう。


ぼくは、いま現在は都内のとあるホテルで働いているが(とはいえもう三週間も自宅待機なのだけど)

三年ほど前まで、長いこと街場のバーで働いてきた。


バーテンダーの仕事は、簡単に言うとお客さんにカクテルだったりウイスキーだったり、お酒を提供することだ。

でも我々のあいだではよく


バーテンダーは酒を造れて当たり前」


と言われている。

ぼくも師匠や先輩から言われ続けてきた。


実はもっと大切なのは、お客さんの話を聴くことだ。

バーテンダーはあくまで聴き役。

そしてその先にあるのは、何かを察し、時には気づかうことだろう。


ぼくが思うに、いいバーにはいいバーテンダーがいる。

いいバーテンダー、これまた定義するのが難しいけど、

それは美味しいお酒を出してくれるだけでなく、お客さんに寄り添ってくれるひと。

(突き放したりするのも必要な場合もあったりするのだけど、それはまた別のはなし)



バーも飲み屋も不要不急、この非常事態で厳しい状況におかれているひとたちは他にたくさんいる。

そういう意見はもちろんわかっている。

バーはいわゆる三密で、感染のリスクが高い場所として真っ先に挙げられた場所のひとつだ。

だからいまは我慢しよう。いや我慢せざるをえないんだ。

休業要請を受けて、開いているバーを探すほうが難しい。

とある東京の老舗バーが、休業から再開することなく店を閉める、という話も耳にした。

バーに限らず小さな飲食店だったら、半ば自転車操業のような営業のとこはたくさんある。

恥ずかしながらぼくの店もそうだった・・・・・・。


だけど世の中が落ち着いたら、ちょっと心に余裕ができたら、バーの扉を開いてほしい。

いや本当はむしろ余裕がないときこそ、足を運んでほしい。


ぼくらの心を休ませてくれたり時には奮い立たせてくれる、

「止まり木」が、そこにはあるから。

ヤバい、しょっぱなからなんか真面目に書き過ぎてしまった。。

ついついカッコつけちゃうしw

次回はもうちょっとテキトーに書きます。