“香水”

「香水」って曲が流行っている。

https://youtu.be/9MjAJSoaoSo

近所のスーパーに買い物に出かける度に有線で耳にして、なんか気になった曲。

最近「意識して音楽を聴く」という習慣がめっきり薄れてしまった四十代も半ばに差しかかるオッサンの言うことなので、
しょうもない戯れ言として、お目汚しを失礼させて頂きたい。


音楽について、僕は専門的知識はないし、マニアックに掘り下げるほどの好みもない。
ランニングの時に聴くスマホのプレイリストは、いまだにB’zエアロスミスとレッドツェッペリンだ。
5年ほど前にランニングを始めた頃に、ツェッペリンの“Good times Bad times ”が、その頃の自分のピッチとペースに合うことを発見して、「やっぱツェッペリンだよな!」と汗だくになりながら思ったことが懐かしい。


“香水”の話題に戻る。

自粛期間中にスーパーへ買い物に出かける度に
店の有線でかかるこの曲の、
サビの「ド〜ルチェア〜ンドガッバ〜ナの 香水のせいだよ〜」って部分がやたら耳に残った。

この曲の魅力とかヒットの背景なんかは自分が語れるはずもないので割愛する。

ただ自分のような素人には、ギターの伴奏だけでコーラスもない至ってシンプルな構成が耳に心地よく、
否が応にも歌詞が頭に入ってくる。

歌われているのは、別れた彼女との、未練とは簡単に言えないような、ちょっとモヤっとした距離感。

香水に限らず、シャンプーとかボディクリームとか化粧品とか、香りって記憶を呼び覚ますトリガーになる。
街角ですれ違った女の人の残り香が、昔付き合った誰かの香りと同じで、その人を思い出したり。

赤の他人がトリガーとなる香りを身にまとっていてもふっと記憶が呼び覚まされるのに、
当の本人がその香りをまとって隣にいたらなおさら。

でもオッサン、「そんな経験、あるよねー!」と思いつつも、なぜだか感情移入できなかった。
僕は、ビートルズやGS全盛時代の親のもとに産まれ育って、思春期と青春時代を90年代JPOPとともに過ごした世代だ。
団塊ジュニアとか失われた世代とも呼ばれる……)
音楽の話になった時、他の世代のひとには「安室ちゃんと同い年なんすよw」と言うこともある。

音楽の嗜好はともかく、二十年前の僕なら、この曲を知ったらとりあえずCD買って何度も1曲リピートしたはずだ。
もしかしたら泣いちゃってたかもしれない。

でも僕は、この曲に感情移入するには歳をとり過ぎたみたいだ。
「あー、そういうこともあるよねー」
「うん、あるあるw」
「その子のタバコの銘柄変わってからがホンモノw」

そんなつまらないツッコミばかりが思い浮かぶ。

もちろん、その曲の良さと、自分が感情移入することとは全くの別物なのだけど、
「二十年前の自分とは違う」ってことにちょっとだけ淋しさを憶える。

天にも昇るような幸せや絶頂に恵まれたり、自分ひとりが世界のどん底にいて悲劇の主人公のように思えたり。
出会いと別れを繰り返す。
歳を重ね、そんな「ときめきと戸惑いを」何度も何度も経験して、いまの自分がある。
そうこうしてるうちに、喜びにも悲しみにも、いわゆる感受性ってやつが鈍くなったのかなと思ってしまう。
多くの人に聴かれている曲なのに、それを純粋に楽しめない自分を恥じることはさすがにないけれど、「歳をとったんだな……」と思う。
なんとなく、それがちょっとだけ淋しい。



まあ僕の記憶のトリガーは、ドルチェアンドガッバーナじゃなくランコムの香水ですけどねー。